第7話|揺れの中で、今に立つ

日本とスペインのあいだで揺れながら今に立つ Lauri’s Story

日本とスペイン、仕事と家庭、そして老いていく親。
どちらかを選べば、どちらかを失う揺れの中で、
私はようやく「今に立つ」という感覚に辿り着いた。


立ち止まった大きな理由は、
日本とスペインのあいだ、
そして仕事と家庭のあいだで、揺れ続けていたことにあった。

どちらかを選べば、どちらかを失う。
そんな状態の中に、私は長く立っていた。

日本で活動を広げるということは、
スペインの家を空けたままにするということでもある。

そして私にとって日本は、
仕事の場であると同時に、
老いていく親のいる場所でもあった。

夫の同意があったとはいえ、
それが期限付きである事実は変わらなかった。

「どちらも大切にする」という言葉は美しい。
けれど現実は、いつも静かに問い返してくる。
それは本当に、両立なのか。
ただの先延ばしではないのか、と。

どっちもは無理なのかもしれない。
どういうバランスを取ればいいのか。
それは、考えて分かるものではなかった。
実際にやってみるしか、確かめる方法はなかった。

行き来し、試し、迷い、
時には、どちらにも十分に応えられていないような
居心地の悪さを抱えながら、時間だけが過ぎていった。

※前回の記事では、私が立ち止まった理由について書いている。


日本で活動を広げることは、
私にとって「将来のため」だった。

けれど、本当に大切にすべきものは、
未来ではなく、
今ここにある時間だったのかもしれない。

「間」とは、
過去でも未来でもなく、
今という現在の中に
ひそんでいるものなのだと、
ふと思った。

けれど、その揺れの中で、
少しずつ輪郭を持ちはじめたものがある。

すべてを完璧に保つことはできない。
どこかで手放し、どこかで譲り、
それでも続けていける形を探すしかない。

そうしてようやく、
私は今、自分なりのバランスの上に立っている。

理想的とは言えないかもしれない。
誰かの正解とも違うだろう。
それでも、これなら続けられる、
そう思える場所だ。


そして、本当に守りたいものが、
ようやく、はっきりと見えたのも――今だ。

それは、
何かを新しく手に入れた、ということではない。

失わずにいたいものが、
何なのかを知った、というだけのことだ。

コメント