第2話|帰る場所を探して

第2話|Two Roots, One Journey アイデンティティの迷宮と、遠い国で見つけた “帰る場所” Lauri’s Story

※この記録は、第1話から続いています。
第1話(後編)|新しい章のはじまり


混血として育った私は、幼い頃からずっと
「私はどこに属するのだろう」と心のどこかで問い続けていた。
日本で生まれ育ちながら、完全に日本人だと言い切ることができない。
けれど、どこか別の国の文化を知っているわけでもない。
その曖昧さが、ずっと自分の中の小さな棘のように残っていた。

スペインに来てから、その棘は一度くっきり浮かび上がった。
この国では宗教観が生活の根を支えていて、
国家も文化も、まるで大きなキリスト教の物語の上に立っているかのようだった。

街の至るところにある教会、祭りの意味、人々が信じている“目に見えない価値”。
そのすべてが、日本で暮らしていた時とは根本から違った。

そんな中、スペインの人たちから日本文化について尋ねられた時、
私は驚くほど言葉が出てこなかった。

——私は、日本のことを何ひとつ説明できない。

自分の文化を語るためには、
その文化を形づくってきた“宗教観”を知らなければならない。
その気づきから、私は初めて本気で 神道や仏教 を学び始めた。

そして知れば知るほど、
私は長い間とんでもない誤解をしていたことに気づいていった。

日本は単一民族だから排他的なのではないか——
そう思っていたのは、ただの“表面的な見え方”に囚われていただけだった。

本当の日本は、まったく逆だった。

古代から日本は、
異国から来た文化を柔らかく受け入れ、
良い部分を丁寧に育て、
独自の美しさへと昇華させていく国だった。

仏教もそう。
建築も、音楽も、衣食住のあらゆる営みも、
世界から吸収したものを“日本の色”に変えていった。

排除ではなく、調和。
拒絶ではなく、融合。
日本文化の本質は、こんなにも大きく、優しく、しなやかだった。

私はそれを知らなかった。
「日本は私を受け入れてくれない」と勝手に思い込んでいたのは、
私自身の中にあった誤解だった。

そんなある日、ご縁があって、
とあるお寺の山主さんとお話しする機会をいただいた。

仏教の言葉は、不思議なほど静かに、まっすぐ心に届いた。
そこで初めて、日本文化の奥底に流れるものが、
自分の中の“何か”と響き合った。

私はその日、初めて心の底から思った。

「日本が好きだ。
ここに生まれたことは、贈り物だったのだ」と。

ずっと遠い国で、ようやく自分の“根”に触れたような、
静かで優しい確信だった。



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