第8話|自分に戻る途中で

Lauri’s Story

これまでの話では、
立ち止まり、揺れ、
「今に立つ」という感覚について書いてきた。

▶︎ 第7話|今に立つ


けれど、
立ち止まったその先で、
もうひとつ、
向き合わずにはいられない問いが残っていた。

問い——
私は誰なのか。
自分らしさとは、何なのか。

あっちか、こっちか。
選択のあいだで揺れ続けているうちに、
自分が何者なのか、
分からなくなっていった。

誰かのために。
家族のために。
何かのために。

そうして気づかないうちに、
私は、
自分自身をどこかに置いてきてしまっていたのかもしれない。

それでもまだ、
私は自分をうまく説明できそうにない。

言葉にしようとすると、
大切な部分ほど、
こぼれ落ちてしまう感覚がある。


だから私は、
フラメンコを踊っているのかもしれない。
説明できない思いを、
言葉ではなく、
身体で確かめるために。

フラメンコを始めた頃、
「スペイン人みたいに踊ること」を
求められる場面が多かった。

でも、
それにはずっと違和感があった。

ものまねをしたところで、
それは一体、
何を表現しているんだろう、と。

スペインに来て、
フラメンコの世界に身を置くうちに、
あの違和感は、
だんだんそのまま受け取れるようになった。

私は、私。
スペイン人ではないし、
無理にそうなる必要もない。


それに気づけたのは、
たぶん、
周りの人たちとの関わりの中で、
少しずつだった。

力を抜いて、
ただ自分でいようとしたとき、
それを身体で、
なんとなく分かった気がした。

今はまだ、
それ以上の答えは持っていない。

でも、
それでいいと思えている。

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